義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた
それから宣言通りに固く手を繋いだまま、イルカショーを観る。手汗が気になって、イルカどころじゃなかった。
時々香る駆くんの匂いに緊張して、笑いかけてくれる姿に心音が甘く響く。
「……のんちゃん、アイス。何味がいい?」
「いちご」
「了解ー」
私の好きないちご味のアイス。券売機の前で何味にするか訊きながらもストロベリーのボタンに駆くんは触れていた。
「……俺も好きだよ。」
「………」
「ストロベリーのアイス。」
なんてベタな。
「っ…アイスね!美味しいよね。」
変に緊張して強張る理由も、拒絶してしまう理由も、冷たく当たってしまう理由も。
薄々気づいてる。
「……俺は…かき氷食べたいかも。あ、でも寒くなるかな?」
わかってるのに、わからないフリをするのはきっと。
「………私がチキンだからだ」
「ん?スモークチキンにする?」
「………」
駆くんとの噛み合わない言葉に笑いながら、勢いでスモークチキンを買った。
きっとこれは新しい体験だ。
駆くんと作る新しい思い出。
願わくば、私と同じ気持ちでいてくれたら嬉しい。
「楽しいね。」