義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた
extra 『ふゆ』

駆side






「あったかぁーい」


働いて最初のボーナスの行き先は、コタツだった。

後悔はしていない。温かいし、家にコタツがない環境で育った人間からすると夢のような代物だ。

それに…。


「みかんおいしい〜。しあわせ〜。」


お酒を飲んで極楽状態の妻がコタツに入ってゆったりしている。それが俺にとってとてつもない癒しだった。


「もう一杯飲む?」

「明日休みなの〜飲む〜。」


伸ばし棒がついたような話し方に笑えてきた。話す日本語もヘンテコで見ていて飽きない。


「日本酒〜。おいしい〜。しあわせ〜。」


上機嫌に笑うのんちゃん。頬は赤くて、力が抜けていた。

そしてとろとろに溶けた視線を受けて、一瞬で察する。


「………駆くん、近くまで来て〜…」


ほら、来た。


「なんで?」

「近くまで来て〜」


ふにゃふにゃした声音の後、駄々こねるように頬をプクッと膨らませるのんちゃん。

………いとも簡単に悩殺されてしまう。

胸の高鳴りがピークに達した時、抗えずにのんちゃんの隣に移動した。


「んー、もう少し後ろ下がって。」

「?」


よくわからない指摘のまま、後退する。こたつの布団から足先以外が外に出ている状態になったところで…。


「寒いー?」


と訊いてくる妻。


「うん。寒い。」


何がしたいのかよくわからない。かなり酔ってるな、という印象。


「では、そんな寒がっている駆くんに、私がご奉仕します!!」

「……え…?」


どういうことだ?と眉間に皺を寄せていると…。


《ドサッ》


勢いよくのんちゃんの頭が太腿の上に乗る。


「っ…のんちゃん…?」

「のの布団です!あっためてあげる!」

「…………」


しばらく無言のまま機嫌のいいのんちゃんを上から見下ろした。お酒のせいで幼稚化してるのも、本当に可愛いと思うから自分はかなり毒されていると思う。


「あったかい?」

「ん〜、まだ寒い。」

「えぇ〜。じゃあどうしたらあったかくなる〜?」

「……んー…じゃあ、膝の上座って。」

「いいよー」


起き上がって、お願いした通りに膝の上に座る。


「のんちゃん、こっち向きがいい。」

「んー?」


従順さを利用して向き合うように座って密着した。


「のの布団さん、ギュッて温めてほしいんですけど。」

「承知しました〜。お任せくださ〜い。」


ヘラヘラしたまま、頭の後ろに腕を回す。それから全身を触れ合わせて、のんちゃんは…。


「のの布団、オプションあります〜。」

「オプション?」

「うん! 特別オプション〜」


どうせ酔っ払いの発想は大したものじゃないだろう。


「んー、じゃあお願いしようかな」


と、軽い気持ちでオッケーしたのが間違いだったのかもしれない。


「特別オプションは〜……ちゅーです!」

「え? …待っ…んん!」


勢いよくかぶりつくようなキスは、お酒の匂いがした。アルコールの芳香に甘く酔いそうになる。


「のんちゃ…」


こんなにも積極的なのんちゃんは初めてだと思う。ひたすら舌を絡めて、ゆっくり息をする暇さえも与えてくれない。


「ん…? きもちぃ……?」


やっと唇を離してくれたところで、潤んだ瞳を向けて質問してきた。そして俺の反応を見て楽しんでるかのように笑っている。


「激しすぎて、それどころじゃない…」

「……駆くん、顔真っ赤で可愛い…」


嬉しそうな顔して、もう一度。卑猥な水音がやけに大きく聞こえて身体中が熱くなってきた。


《ちゅっ…くちゅ…》


上がる息に高揚もエスカレートしていく。


「のの…。」


向かい合って座るように指示したのは俺だ。イチャつくつもり満々だったし、今の状況は間違いなく美味しい。


でも、やられっぱなしも嫌で…。


力づくで肩を押して距離を取った。


「わっ!」


驚いて目が丸くなるのんちゃんを無視して、次はぎゅっと強く抱きしめる。


「ちょっと…離れて。キスできない〜…」


不服そうにしている妻を膝の上から退かせて、そのまま組み敷いた。


「今度はののを気持ちよくしてあげる」


夫婦になって迎えた冬。


例年よりも熱くて温かくて幸せな冬だった。





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