好みの彼に弱みを握られていますっ!
 立ち去る私の背後で、織田課長の声が聞こえてくる。


「なかなか見どころのある女の子でしょう? 実は彼女、僕の部下なんですけどね、ご覧のように上司である僕にだって、言うべきことはしっかり意見する。――僕はね、母さん。彼女のそう言うところに惚れ込んでいるんです」


 そっ、そんなの初耳です、課長様ぁー!

 思ったけれど、今ここで背後を振り返って問い詰めるのは不自然だ。

「だからね、ハッキリ申し上げておきます。貴女がどう思っていようと、僕は春凪(はな)とは絶対に……――」

 
 何やら気になる文言のその先が物凄ぉーく聞きたかったけれど、距離があきすぎて聞こえなくなって。


 私とは絶対に何なのですか、織田(おりた)課長ぉー!


 あれこれの言葉をグッと飲み込んで、私は店外へ続く扉を開けた。
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