婚約者に裏切られたその日、出逢った人は。

 のみならず、舌先に唇をなめられて、驚いて隙間を開いてしまう。そこから厚い舌が入り込んできて、朝海の口蓋をねぶり始めた。
「ん、んぅ……っ」
 口腔を舐めつくすような、ねっとりとした執拗な舌の動きに、息が詰まる。こんな濃厚なキス、誰ともしたことがない。互いの舌から生まれてくる唾液を飲み込み切れず、唇を動かした拍子に、隙間からこぼれてくる。
 ようやく唇が離れて、朝海は、はあっと大きく息をついた。浅い呼吸を繰り返して酸素を補給する朝海の様子に、聡志は満足そうな笑みを浮かべた。
「可愛いよ、朝海」
 呼び捨てでそんなことを言われて、体の芯から全身に熱が広がる。
 聡志の手が背中に回され、ドレスのファスナーと、ブラジャーのホックが順に外された。それらを脱がされると、身にまとうのはストッキングとショーツだけになった。
 恥ずかしさで固まっている間に、聡志は自分の服を、下着一枚だけを残して脱ぎ捨てる。
 そして今日、三度目のお姫様抱っこで、朝海をベッドまで運んだ。
 マットレスの上に横たえられ、間髪入れず、聡志が覆いかぶさってくる。
 その顔は、今度は唇ではなく、顔の横に近づいてきた。左耳に唇が触れ、吸いつかれる。
「あ」
 耳たぶを形に沿って舐められ、ぞわぞわと、寒気に似た感覚が走る。それはすぐに快感に変換されて、朝海の奥に、じんわりとした炎を灯し始めた。
 聡志の舌と唇が、耳から首筋へ、鎖骨へと下りていく。同時に、彼の大きな手は朝海の何もまとわない上半身を余すところなく撫で、最終的に胸へとたどり着いた。
 知らぬ間に、つんと尖っていた胸の先端を、親指の腹でつぶすように擦られる。
「あ、んっ」
 鋭い快感に、思いのほか大きな声が漏れた。
「気持ちいい?」
 尋ねる声が、どこか意地悪そうなのは、気のせいだろうか。そんなことを思っているうちに、今度は、先端を摘ままれて捏ねられ始める。
「や、っ、あぁ」
「気持ちいいって言えよ」
 気のせいではなかった。朝海に言葉を促す声は、言わなければこれ以上は何もしてやらない、と言外に伝えている。おまけにさっきよりも口調がぞんざいだ。
「っ、あ……いぃ」
「何、聞こえない」
「きもち、いい……」
 快感の隙間を縫って言葉をしぼり出した朝海に、聡志は「よくできました」とでも言うようにうなずく。小さく開いた口が、朝海の胸の先端をぱくりと咥えた。
 ちゅうぅ、と音を立てて吸われ、朝海の全身に電流が走った。
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