優しくない同期の甘いささやき
私は腕時計で時間を確認した。もうすぐ20時になる。まだ遅い時間ではないが、ここから熊野の家に移動すると、滞在時間は一時間くらいになりそうだ。

あまりゆっくりする時間はない。

明日は休みだから、明日会うのでもいいかもと思った。


「ねえ、明日会う?」

「美緒、俺の話を聞いてたか?」

「もちろん聞いていたよ?」

「帰したくないと言ったよな?」


私はサラダに入っているレタスを食べようとして、固まった。レタスは器の中に落ちる。

熊野は不満げな顔で私を見ていた。

帰したくない……確かに言われた。でも、私は帰ろうとするどころか、行くのをやめようと考えた。


「これから来てほしいの?」

「そうだよ。何でやめるって、言うのさ? 来いよ」

「明日改めて、会うのでもいいかなと思ったんだけど」

「このまま明日まで一緒にいたいとは、思わないのか?」


私は落としたレタスに視線を動かして、考えた。

このまま朝まで一緒に?

一緒に何をする?

テレビを見るとか、ゲームをするとかではないだろう。

交際している男女がすることといえば……。
< 107 / 172 >

この作品をシェア

pagetop