優しくない同期の甘いささやき
「美緒も入ってきなよ」

「うん、ありがと」


バスタオルとパジャマになりそうな服を借りて、浴室へと行く。この部屋に入ってから、心がずっと落ち着かない。

深呼吸して、念入りに洗った。

リビングに戻ると、髪を乾かし終えた熊野がいた。

今度はさらさらな髪になっていて、触りたくなる。


「ん? なに?」


断りを入れずに、触ってしまっていた。熊野に不思議そうな顔をされて、慌てる。

私は今、何をしていたのか。


「ごめん! どんな硬さかなーと気になって」

「なんだよ、それ。変なの」

「うん、変だよね。あはは……」


硬さを確認したいとか、変態だ……。両手をこすり合わせて、もじもじしてしまう。

でも、熊野はそんなおかしな行動を気にとめないで、私の持っていたタオルを取った。

自分の方へと私を引き寄せて、ソファを叩く。


「乾かすから、座れ」

「はい……お願いします」


熊野に背を向けて座る。彼は、軽く拭いてからドライヤーをあてた。

温風と髪の中で動く手が優しくて、気持ち良い。まぶたが重くなっていく。

最近姉のこともあって、疲れていた。
< 110 / 172 >

この作品をシェア

pagetop