優しくない同期の甘いささやき
だからなのか、私はそこで眠ってしまったのだ。

目が覚めて、横を向くとすやすやと眠る熊野の顔があった。

今が何時かは不明だが、部屋は窓からの光で明るい。朝になっていた……。

上半身を起こして、顔を両手で覆う。まさかあのまま、寝てしまうなんて……。

ベッドに運んでくれたのは、熊野だよね?

きっと重かったよね?

どんなふうに運んだのだろう?

ふと眠る熊野に触れたくなり、手をおそるおそる伸ばした。まだ起きそうにない。

温かい頬にそっと触れた瞬間、彼の目が開いて私の腕を掴んだ。

その力が強かったから、体が強張った。彼は私を視界に捉えて、掴んだものを離した。


「美緒か……よく眠れた?」

「うん。あの、ごめんね」

「なんで謝る?」

「だって、寝ちゃったから」


熊野も私と同じように体を起こす。寝起きの彼の髪は跳ねている部分もあって、かわいく見えた。

私、昨日から熊野の髪ばかり気にしている。


「マジで寝るとは思わなかったな。揺すっても、全然起きなかった」

「ほんと、ごめんね」


私は肩を落として、両手を胸の前で合わせた。
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