優しくない同期の甘いささやき
「いいよ、何度も謝るな」

「でも……ここまで運んでくれたんだよね? 重かったでしょ?」

「ああ、そうだな。腰がちょっと痛くなった」

「ええっ、大丈夫? ほんと、ごめん!」


また謝ると、熊野は笑いながら手を私の頭にのせた。


「だからー、謝るなって」


私は「ううー」と小さく唸った。本当に申し訳ないと思うし、肝心な時に寝てしまった自分がイヤになる。

なんのために、ここまで来たのだか……。

熊野は私の顔を覗き込むようにして、顔を寄せてきた。


「美緒からキスしてくれたら、許してやるよ」

「えっ……それって、合図になるというやつ……」

「そうだよ。ほら、しろよ」


熊野は目を閉じて、口を向けてきた。私は目をパチパチさせてから、彼の顔を手で押した。

熊野の口から「ウッ」という短い唸り声が出る。


「無理だよ。こんな明るい時間というか、朝から無理だからね!」


朝っぱらから、何をさせようとするのさ……。

熊野は私の手を払って、再び顔を近付けてきた。

私はそれを避けるべく、お尻をベッドの端へと動かしていく。

ずりずり……。
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