優しくない同期の甘いささやき
善は急げだと、熊野は言った。

次の休日の午後、彼は我が家にやってきた。チョコレートが入った箱と花束を持って。

彼の服装は、カジュアルでありながらも上品さを漂わせていた。無駄に顔とスタイルが良いから、よそいき仕様も似合うようだ。

私と一緒に熊野を出迎えた母の「あらー!」と、弾む声が家中に響いた。

熊野はまず、玄関先でミニひまわりの入った花束を母に「どうぞ」と差し出した。

母の頬がポッと赤くなる。


「あら、私に?」

「はい。花屋さんの前を通ったら、きれいに咲いていたので。飾っていただけたら、うれしいです」

「まあ、うれしいのはこっちよー。素敵なお花、ありがとう!」

「いいえ」


喜ぶ母に熊野は優しそうな笑顔を向けた。なるほど……この笑顔に騙されて、彼に恋する女が多いのか。

なぜ熊野がモテるのかと謎だったが、外面が良いってことなのね……。

冷静に見ていたら、父が出てきた。リビングで待つと言っていたのに、待ちきれなくなったようだ。

熊野は姿勢を正した。


「はじめまして、熊野祥太郎と申します。本日はありがとうございます」
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