優しくない同期の甘いささやき
「美緒さんと真剣な気持ちでお付き合いをさせてもらっています」

「真剣な気持ちとは、どのような?」


父からの質問を受けて、熊野はチラッと私を見た。彼はハキハキした口調で答える。


「美緒さんとは、一生寄り添っていきたいと思っています」


その言葉を聞いて、胸が高鳴った。父は一瞬瞳を揺らしたが、落ち着いた声で返す。


「つまり、結婚しようと?」

「はい、結婚したいと思っています」


私は「本当に?」と熊野の腕に手を添えた。彼はその手に自分の手を重ねて、頷く。

この前結婚まで考えているとは、言われていた。

だけど、まだまだ先の話だと思っていた。まだ付き合いはじめたばかりだから。

それなのに、突然家族の前でプロポーズするとは予想外すぎるし、信じられない思いだ。

彼の気持ちが本気なのは、わかっているけれど。

母は口を手で押さえて、目を潤ませていた。姉は目を丸くしている。父は熊野の本気度を探るような目をしていた。

私は家族の反応をざっと確認してから、再び熊野を見る。熊野も私を見ていて、見つめ合うこと数秒……。


「結婚してくれないか? ずっとそばにいてほしい」


私は何も言わず、ただ見つめ続けた。
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