優しくない同期の甘いささやき
透明感のあるきれいな人で、男性社員から人気がある。そんな人から告白されているなんて……。

熊野のことは信用しているけれど、きれいな人を前にしても心が揺れ動かないのかな。

自分に自信があるのか、諦めが悪いのか、内藤さんはなかなか引き下がらない。



「一度だけでいいから、デートしてくれませんか? 私をちゃんと見てほしいんです」

「デートは、好きな人としかしたくない。俺の好きな人は加納美緒だから、彼女以外とは絶対しないよ」

「一度だけでもダメですか」

「うん、ダメ」


私を一途に想ってくれる彼の声を聞いて、胸が熱くなってきた。内藤さんは、とても辛い気持ちだろうけど……。

彼女の沈んだ声が聞こえてくる。


「わかりました。聞いてくれて、ありがとうございます」

「うん、ごめんね」


熊野が謝ると、階段を上がっていく足音が聞こえた。

そっと階段を覗くと、腕組みをしてため息つく熊野の姿があった。

人の気配を感じたのか、彼はハッとした顔でこっちを向いた。

やばい!

この場から立ち去ろうとしたが、手首を掴まれた。


「美緒」

「あ、えっと……」
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