優しくない同期の甘いささやき
「ごめん。調子に乗りました」

「どうして?」

「美緒が幸せだって言うから、浮かれた。ものすごく幸せだなと思ってね」


私は水を止めて、自分の腹部に回っている彼の手に触れた。


「美緒、濡れてるよ。冷たい」

「うん」

「俺の手も濡れるんだけど」

「うん、そうね」


タオルで拭いてないから、濡れているのは当たり前だ。祥太郎の手も濡れているとわかってはいる。

私はフフッと笑って、ぎゅっと握った。彼の手の方があたたかい。

このまま拭かなくても自然に乾きそうだ。

祥太郎は鏡の中の私を見つめていた。


「俺の手をなんだと思ってる?」

「大きくて、あたたかい手」

「なんだよ、それ」

「私の大好きな手だよ」


祥太郎は私の首筋にキスを落とした。彼の唇もあたたかい。

彼が密着している背中もじんわりとあたたかくなってきた。


「美緒、好きだよ」


優しい声で囁いて、私の耳たぶをパクッと噛んだ。痛みはまったく感じないが、「んっ」と声が漏れて体を揺らしてしまう。

鏡越しで視線がまじり合った。


「私も好き」
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