優しくない同期の甘いささやき
「私も楽しみにしていたので、実はちょっと走って来ました」

「それは、うれしいな」


ワインで乾杯し、食事を楽しんだ。料理を食べ終わる頃、黒瀬さんが腕時計を見た。

もう帰らないといけない時間なのかな……まだ一緒にいたいから、残念。

楽しい時間が終わらないよう、私はどうでもいい話を続けた。

しかし、私の話は遮られてしまう。まだ一時間しか経っていない……。


「加納ちゃん、そろそろ出ようか」


デートは終わりだと告げられ、声のトーンが下がる。


「そうですね……」


食後のコーヒーを飲む時間もないのかな。少しでも時間稼ぎをしようと、ゆっくりジャケットを着た。

すると、思いもよらないことを訊かれる。


「まだ時間、大丈夫かな?」

「私は大丈夫ですけど?」


デートの終了を伝えられて、しょんぼりしていた。だから、黒瀬さんが言おうとしていることが予測できなくて、首を捻る。

黒瀬さんは何も答えず、会計を済ませて外に出た。後ろから付いていた私を振り返って、手を出す。

なんのために出されたのか謎だったけど、自分の手を重ねてみた。
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