優しくない同期の甘いささやき
田沢さんは私たちと同い年だが、田沢さんの先輩は年上だ。だから、それなりの挨拶はすべきだと思う。

知奈は私と同じ考えになっているようだったけれど、田沢さんは気にとめていなかった。


「いつまでもここいたら、他の方の迷惑になりますから、テーブルに行きましょう。熊野さんも一緒にどうですか?」


知奈が空気の読めないところがあると、話していたのを思い出した。

この状況で熊野を誘うとは……。

笑みを浮かべる田沢さん以外は、神妙な面持ちだ。

熊野が小さく咳払いした。


「お誘いはありがたいのですが、俺と加納はお断りさせてもらいます」


田沢さんの笑顔が崩れた。


「えっ、加納さんも?」


今度は熊野が笑顔になる。心から笑ってはいないのが見てわかったが。


「はい、加納は俺が口説いている最中なので。ほら、行くぞ」


熊野はおじぎして、私の手を握った。知奈と田沢さんは戸惑っていて、田沢さんの先輩は唖然としている。

熊野の方に引き寄せられた私は、焦った。


「ちょっと、なに勝手なことを言ってるのよ」
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