8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「あなたという人を知ってからは、憎らしさも半減しましたから、大丈夫です」
「半分しか減ってないではないか」
「好きはもっと増えていますよ。それに、互いに愛し合う夫婦でも、気に入らないところはあるものでしょう? 嫌なところも含めて、愛しているのですもの」

 笑って見せたフィオナは、オスニエルが黙ってしまったのに気づき、近づいて顔を覗き込む。すると彼は、少し泣きそうな顔をしていた。

「オスニエル様……きゃっ」

 腕を引っ張られ、ぎゅ、と抱きしめられる。

「お前は、……なんでそうかわいいのだ」
「オスニエル様もかわいいですよ」

 なんとか手をまわして、肩のあたりを撫でる。おそらく彼は、こんな風に誰かに甘える経験が極端にないのだ。

「人を許すことは、幸せになる近道なのかもしれません」

 憎しみは、どんどん憎しみを増殖させる。負の連鎖を巻き起こしやすいのだ。それを断ち切ることは難しいけれど、負の執着はつらいことのほうが多い。だったら思い切って、許してみる勇気も必要だ。

「お前は強いな」
「ふふ」
『まあ、俺が気に入るくらいだからな。お前ら、いい加減離れろ』

 ドルフがふたりの間に下から顔をねじ込んできた。フィオナは笑って、ドルフのことも抱きしめる。

「やきもち? ドルフ。貴方のことも大好きよ」
『……ふん』

 照れた様子の聖獣がかわいらしく、幸せな気分になった。

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