8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
  *  *  *

「あっ、リーフェ」
「リー!」

 二ヵ月ぶりに現れたリーフェに、双子はうれしそうだ。よってたかった触りに来るが、リーフェは双子に対しては嫌がらない。
 ポリーとシンディも、相手をしてくれるリーフェの登場にほっとしたような顔をしている。

「それにしても、リーフェったらどこに行っていたのでしょうねぇ。餌をもらうことに慣れている獣が、野生で生活するのは、大変だと思うのですけど」

 不思議そうに言うのはシンディだ。シンディには、フィオナに不思議な力があることは伝えているが、聖獣の存在までは教えていない。

「そうね。心配したけれど、帰ってきてくれたからなんでもいいわ」

 フィオナがごまかすと、「でも、きれいに洗ってあげないと危ないのではないでしょうか」と頬に手を当てている。衛生面を心配しているのだろう。

「きれいだとは思うけど、気になるのならお風呂に入れてくれる?」

 幸い、リーフェは湖で長く暮らした子なので、水を嫌がらない。

「はい」

 三十分ほどして戻ってきたリーフェは、つやつやの白い毛並みからいい匂いがしていた。
これにはアイラが大喜びで、「アイラがだっこする!」と言ってきかない。

「アイラ様には重たいですよ?」
「へーき!」

 フィオナが心配で視線を送ると、リーフェは片目をつぶった。どうやら浮いて体重を感じないようにしてくれているらしい。

「ふわふわ~。かあいいねぇ」
「ドル」

 ドルフを呼んで手を伸ばすのは、オリバーだ。

『……俺か』

 アイラと同じことがしたいのだと理解したドルフは、おとなしくオリバーのもとに向かい、抱っこされていた。

「お散歩に行きましょうか」

 フィオナはここのところ、お散歩を日課にしている。それは、ジャネットを監視するという目的であるのだが、子供たちの能力を見極める意味もある。
 城のほうに近づくと、アイラは不安そうにフィオナの服の裾を握った。もう片手でリーフェを抱いているから、能力が自然と増幅されているのかもしれない。

「アイラ? 大丈夫?」
「おしろに、あのひといる」
「あの人って?」
「おはな、いっぱいつけているの。ダメっていってる」

 突然、アイラが怯えたように座り込んだので、フィオナはしゃがんで抱きしめた。

「やだよう。ダメ」

 ぎゅうとしがみついてきたアイラは、「たすけて、とーたま!」と叫ぶ。
 心配そうにオリバーがやってきて、フィオナとアイラに触れたとたん、フィオナの脳裏には映像が浮かび上がってきた。

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