8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 ついでのように言われた言葉は、フィオナには結構な衝撃を与えた。

「ご政務でなにか問題でも?」
「いいや。王城にいるより、居心地がいいのではないか?」

 少し勘に触る笑い方だったが、これ以上を国王に聞いてもどうにもならない。

「わかりました。では、エリオットの件は、この通りに進めさせていただきます」

 フィオナは頭を下げ、国王の執務室を出た。
 自分を嫌っている人と話すのは疲れるものだ。扉を閉めた瞬間から長い溜息が出てしまう。

「どうかされましたか?」

 廊下待っていたカイが、心配そうに話しかけてくる。
 城の中だから、普段ならば必要のない護衛であるが、オスニエルがいない期間は、後宮から出るときは必ず誰かをつけるようにとオスニエルにしつこく言われているため、護衛を頼んでいたのだ。

「少し疲れただけよ。……それより、カイは最近どう? ポリーとはうまくやっているの?」

 カイとポリーは、フィオナが出産する少し前に、両思いであることが判明したらしい。
 一応、ご両親には挨拶を済ませ、今は婚約者という関係性だが、結婚はまだだ。ポリーが、フィオナの子育てが落ち着くまではと言って渋っているらしい。
 自分のせいだと思うと申し訳なく、フィオナとしては早くふたりを結婚させてあげたいところだが、ポリーほど信頼のおける侍女もなかなかいないため、困ってもいる。

「どういうのをうまくやっているというのか俺にはわかりませんが。喧嘩などはしていませんよ。結構楽しくやっています」
「でも、カイだって年齢的に早く結婚したいでしょう? そろそろ子どもたちも大きくなってきたし、話を進めてもいいのよ」
「ええ。また話してみます。なかなかタイミングがつかめなくてですね……」

 ポリーの結婚に、一番不満そうにしているのは実はドルフだ。「人間は結婚年齢が早すぎる」とぶちぶち言っていたのを聞いたことがある。
 まさか邪魔なんてしていないでしょうねとフィオナはひそかに心配する。

「後宮に戻るわね。カイも一緒に来てくれる? 手紙を書きたいから、書き終えたらすぐに出してきてほしいの」
「はっ」

< 25 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop