8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 そのオスニエルは、あとから入ってくるフィオナのために手を差し伸べている。

「アイラ様。抱っこのほうがいいのですか?」
「うん」
「では失礼して」

 ロジャーが笑いかけ、手を伸ばしたアイラを抱き上げた。
 居間には、ソファがテーブルを囲むように並んでいて、子犬姿のドルフが寝転んでいた。

「ドルフ、悪いがどいてくれ」
「キャン」

 答える前にオスニエルにどかりと座られて、ドルフは不満げに鳴いてソファから下りた。
 子供たちのおもちゃが置いてあるカーペット敷きのスペースには、子犬姿になっている白い毛並みのリーフェが寝転んでいた。ドルフが近づいて来るのを見ると機嫌よさそうに尻尾を揺らす。

「今日はリーフェがいるのだな」

 白色の犬を見て、オスニエルがつぶやいた。
 リーフェはふたりが新婚旅行先のルーデンブルグで出会った聖獣だ。オズボーン王国の人間は、聖獣の存在を信じていないため、リーフェは誰にも気づかれることなく、ルーデンブルグの湖とその近くの森を守っていた。
 そこに、ドルフを連れたフィオナ一行が現れ、リーフェはめったに会えない仲間であるドルフに興味を持ったのだ。
 彼女はドルフに存在を気づいてもらうべく、当時、まだフィオナのお腹にいた双子に加護を与えた。フィオナは妊娠にも気づいていないような時期で、まだ自我さえもない双子の力は暴走し、それによって様々なトラブルが引き起こしたのだが、なんとか解決することができた。

『一応、加護を与えちゃったし、時々様子を見に行くね』

 ルーデンブルグから出発する際、リーフェはそう言った。

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