8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「来てもいいけど、聖獣の姿のままじゃ駄目よ。ここに来るときは、子犬の姿になること。いいわね?」
『それって大事なこと?』
「そうよ」
『わかった! いいよ』

 いまいち不安な返事ではあったが、リーフェは約束を守ってくれている。そんなわけで、後宮には時々、ドルフ以外に白い子犬が入り込んでくるのである。
 事情を知っているポリーはともかく、なにも知らないシンディは最初追い出そうと躍起になった。しかし、聖獣に一介の侍女がかなうわけもなく、リーフェに遊ばれる結果となってしまった。

 フィオナは、後宮を清潔に保とうとするシンディに感謝し、『抜け出し癖はあるけど、この子は私の新しい飼い犬なの』と告げ、リーフェにはドルフをおそろいの首輪を作ってあげた。
 すると、今度はドルフが拗ねてしまうという、どうにも面倒なやり取りがあったのだ。
 ちなみにドルフが拗ねた原因は、『俺のものと同じものは誰にも作るなと言ったろう!』だった。案外かわいいところもある聖獣である。

 結局、ドルフにも新しく首輪を作ってくれることでようやく和解したのだ。

「リーフェは気まぐれな子ですので、いつまでいるかわかりませんけどね」

 フィオナは手を引かれるまま、オスニエルの隣に座る。するとオリバーはフィオナの膝の上を狙いにやってきて、それを見たアイラも、ロジャーの腕から飛び出し、オスニエルの膝に乗った。
 ポリーとシンディがお茶の支度を終えると、オスニエルはふたりの侍女とロジャーに、しばらくは入ってくるなと言いつけて追い出した。

「私もですか?」

 非難の声を上げたのはロジャーで、オスニエルは彼をじろりと睨むと、「そもそもついてこいとは言っていないぞ」と言う。ロジャーは肩をすくめて、「わかりましたよー」と力ない返事をして、居間を出ていった。
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