王子の盲愛
しかし、既に腕がプルプルし始めていた。

「フフ…理世ちゃん、腕きついでしょ?
僕が持つよ?」
「うー、ご、ごめん……」
「フフ…可愛い~」
王弥が、クスクス笑っている。

「お恥ずかしい…////
ところで王弥くんって、身長何センチ?」
「えーと…確か、183かな?」
「やっぱ、背高いね!
王弥くんが見える景色って、やっぱ私と違うのかなー?」
「え?見える景色?」
「うん。
私は155センチなんだけど、30センチ近く身長差があったら、見える景色って違うんじゃないかな?」

「………」
王弥は目をパチパチさせて、理世をジッと見つめていた。

「え?何か私、変なこと言ったかな?」
急に王弥の動きが止まり、理世も不思議そうに王弥を見つめ返した。

「理世ちゃんって、面白いね!」
「え?そうかな?」
「そんなこと、言われたことがない」
「そう?」
「見える景色かぁー!
理世ちゃん、ちょっと…失礼!」

「ん?
え━━━━━!!!!?」

王弥が、後ろから理世の脇の下を持ったかと思ったら……
ひょいっと持ち上げられたのだ。

「どう?僕の見える景色!!」

「○◆★□●○◆★!!!?」
理世は突然の王弥の行為と、恥ずかしさで開いた口が塞がらない。

「理世ちゃん?」
「王弥くん!?下ろして!お願い!恥ずかし……」
顔を真っ赤にして暴れる。

「理世ちゃん、そんな怒ることないのに…」
「だ、だって!こんな…子どもみたいな……!」
理世は、とにかく恥ずかしくて王弥から目を反らした。

「…………僕の見える広い世界、見せてあげたくて!」

「え?」
風が……ザァァァ…!!と吹き付けた。

「僕なら、理世ちゃんに色んなモノ…見せてあげられると思うんだぁ~
理世ちゃんが、ずーっと傍にいてくれるなら……
僕は何でも出きるよ!」

王弥の短い髪の毛が、風に揺れる。
王弥の爽やかな香水と、安心する香りが漂ってくる。

「王弥くん…」

「理世ちゃんが助けを呼べば、何処へでも助けに行く!
理世ちゃんが泣きたい時や寂しい時、一晩中…頭を撫でて“大丈夫だよ”って囁いててあげる。
僕は、理世ちゃんの一番になりたい!」

「王弥くんは、真っ直ぐだね……!
何の曇りもなくて……ただ真っ直ぐで…
だから、王子って呼ばれて愛されてるんだね!」
理世は、少し背伸びをし王弥の頬に触れた。

「理世ちゃん?」
「高校生の頃、毎日王弥くんが挨拶してくれてたでしょ?それ……私にとっては、心の支えだったんだよ?
彼に振られて、なんか色んなことがどうでもよくなって……
そんな時に、王弥くんの挨拶があったから頑張ってこれた!ありがとう!」
理世は、ニコッと微笑み言った。
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