星名くんには秘密がある
心地よい春のような音が胸に響く。緊張した顔を一呼吸置いて上げると、陽光に照らされて輝いている人がいた。
きらきらした髪と瞳をした男の人が、私を見ている。
足が動いた。ふらつきながらも立ち上がって、しっかりと地面を踏みしめて。もっと彼に近付きたいと、心が叫んだ。
「無事で、良かった。ほんとに、無事で」
強く抱きしめられた体から、彼の体温が伝わってくる。速い鼓動の音と優しい匂いに包まれて、遠い昔に立っている気持ちになった。
「……あの事故で、たぶん、僕は死ぬはずだった。結奈ちゃんを残して。でも、生きてる。ちゃんと、生きてる」
胸が締め付けられるように苦しくて、温かくなる現象を私は知っている。
緩やかな風に乗って、緑の葉がひらひらと落ちてくる。
「急がなくていいよ。思い出してくれるまで、待ってるから」
瞬きをした瞳が濡れていた。胸の奥からあふれ出て来る感情が何かは不透明だけど、止めどなく流れてくる。
握られた手は優しくて、どこか懐かしさが募る。知りたいと願いながら、私はその手を受け入れた。心を繋ぐように、さっきよりも強く。
「ずっと、結奈ちゃんが好きだよ」
雨のように葉桜が降ってきて、空が泣いているみたいに見えた。
それは悲しみではなく、きっと幸せの涙。
fin.
きらきらした髪と瞳をした男の人が、私を見ている。
足が動いた。ふらつきながらも立ち上がって、しっかりと地面を踏みしめて。もっと彼に近付きたいと、心が叫んだ。
「無事で、良かった。ほんとに、無事で」
強く抱きしめられた体から、彼の体温が伝わってくる。速い鼓動の音と優しい匂いに包まれて、遠い昔に立っている気持ちになった。
「……あの事故で、たぶん、僕は死ぬはずだった。結奈ちゃんを残して。でも、生きてる。ちゃんと、生きてる」
胸が締め付けられるように苦しくて、温かくなる現象を私は知っている。
緩やかな風に乗って、緑の葉がひらひらと落ちてくる。
「急がなくていいよ。思い出してくれるまで、待ってるから」
瞬きをした瞳が濡れていた。胸の奥からあふれ出て来る感情が何かは不透明だけど、止めどなく流れてくる。
握られた手は優しくて、どこか懐かしさが募る。知りたいと願いながら、私はその手を受け入れた。心を繋ぐように、さっきよりも強く。
「ずっと、結奈ちゃんが好きだよ」
雨のように葉桜が降ってきて、空が泣いているみたいに見えた。
それは悲しみではなく、きっと幸せの涙。
fin.


