メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

パルパルっと音がして、晴夏がレンタカーでやってきた。不二子ちゃんと同じ車種だ。

「兄貴、意外といい趣味してるじゃない」と珍しく晴夏は不二子ちゃんを褒めた。コンパクトカーなので背の高い晴夏には窮屈そうだが、中は意外と広く、必ずこの車を借りてくるようになったのだ。

晴夏の車はいつも黄色。まさに映画に出てくるのと同じ色なので、名前は当然「ルパン」だ。

「灯里ちゃーん」
ムギュッとハグされると、晴夏の豊満な胸がちょうど顔の位置にくる。ちょっと気恥ずかしいが、灯里もギュッと抱きしめ返した。

なんとも不思議な縁だが、晴夏と灯里は妙に気が合った。正反対な性格のようでも、分かり合える部分が多い。食の好みもよく似ていて、今日も二人で地元の美味しい蕎麦屋に行く。

良子さんの家に行っても、話は尽きることなく、「あなたたち、よくそんなに話すことがあるわね」と呆れられるほどだ。

草木染教室の後には良子さんがハーブティーを淹れてくれるが、これも楽しみの一つだ。スコーンに手作りジャムを添えたものまで頂き、大満足。「また来ますね」と笑顔で別れ、二人でルパンに乗り、パルパルと家に帰った。

「晴夏さん、今日は泊っていけるんですか?」
「今日は帰るわ」

返ってきた返事にがっかりする。毎回泊っていってくれるので、今日も泊ってくれると勝手に思い込んでいた。二人で楽しもうと、美味しいワインとソーセージも用意していたのだ。

「灯里ちゃんもね!」
「え?」

晴夏は、家に入ると洋服ダンスを開け、「はい!これに着替えて」と指示を出す。「灯里ちゃんに似合いそうな服を見つけたの」と前に晴夏が送ってくれた小花柄のワンピースだ。

「いつものお団子も可愛いけど、今日はちょっと大人っぽくいきましょ」
髪をほどいて、クルクルと上手に編み上げてくれる。

「手土産は新幹線の駅で買えばいいか…」と晴夏がつぶやくので、「ワインとソーセージがありますけど」と提案してみる。

「おっ!いいねぇ」
「えっと、でもどこへ行くんですか?」

ホクホクとした返事が返ってきても、灯里の問いかけに返事はない。
やれやれと思いながら、保冷バッグにソーセージをいれ、ワインも用意した。

一日分の着替えを持ってと言われたので、急いでカバンに詰めると、あれよあれよという間にルパンに乗せられる。どこに行くのかわからぬままに、パルパルと家を後にした。

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