メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

身支度を整えた灯里が戻ってきたので、三人で散策に出かける。

この町は秩父に近い町だが、秩父ほど観光スポットがない。特産品も特になく、交通の便もよくない。イベントを催すにはなかなか難しい条件がそろっていた。

「単発的なイベント開催というよりは、持続的に人を呼べるものの方がいい気がするな」

町に全く関係のないイベントを企画しても、長年続けていくのは難しい。

「都内から一時間半で来れるなら、オートキャンプ場とか、流行りのグランピングとか、キャンプの町として売り出すのもいいんじゃないか?この川は魅力的だろう」

町を流れる川を見ながら提案する。河川敷が広い川はキャンプに最適だ。
環境整備に時間はかかるが、長く活用できる。

「おまえ、なんで真面目に仕事してるんだよ。本当に視察してんじゃねえよ」

今西に耳元で叱られてハッとする。「つい、習性で…」と頭を掻いた。

「すごい。やっぱりプロの人は違いますね!」

今西と安西のやり取りは聞こえてないらしく、灯里は感嘆の声を上げた。

「ヤマダさんが担当してくれるなら、この町の人たちも安心ですね」

灯里が尊敬のまなざしで見てくるのがこそばゆい。安西は、がんばりますと小声で答えた。

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