契約結婚のススメ
「無理だな。予定が詰まっている」

『まあ、つれないわね』

 ここへ来るのが同じ便だったのは偶然だから仕方がないとはいえ、誤解を招く行動をとるつもりはない。

 空港で離れる時にも、『俺を巻き込むな』ときつく伝えている。

「言っただろ。もう忘れたのか」

『わかったわよ。じゃあ、希子おばさまと相談するからいいわ』

 ろくに返事もせずに電話を切った。

 さてどうするか。本気で考えないと。

 結婚披露パーティーで、陽菜には手を出すなと忠告した。

『〝一貴は私のために結婚したの〟ってさ』

 そう言った仁に確認すると、美加はそのあと『冗談よ』と笑ったという。

 だがただの冗談とも思えず俺に話したらしい。

『美加はそれほど悪いやつじゃないと思うが、金への執着がちょっと異常だ。頭のいい女だし、気をつけろ』

 柳美加は俺の伯父である南城郵船常務取締役と関係を持った。

 迂闊にも俺が気付いたのは四カ月前。俺と陽菜が結婚を目前に控えた時期だ。

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