契約結婚のススメ
『ゴメンナサイ、アトデ、カケマス』

 え? 今なんて?

「あ、わ、わかりました」

 ツー、ツーと音を立て電話が切れた。

 男性の声の他に叫び声が聞こえた。女性の声で『ボス、ボス!』と呼びかける声。医者をと叫ぶ声もした。

 ボスって一貴さん?

「どうしよう」

 どうして一貴さんが電話にでなかったの。 一貴さんが倒れたの?

「陽菜? どうしたの」

「おかあさん、なんか、電話に……」

 ぐらりと目眩がした。

「陽菜? しっかりしなさい。なにがあったの?」

「あ、うん……」

 義母がいるときでよかった。

 気が動転してしまって、ひとりではどうしていいかわからなかっただろう。

「一貴さんじゃない人が電話に出て、後でかけ直すって。後ろで医者を呼ぶ声がして。どうしよう、おかあさん」

 義母の表情も強張る。

「落ち着いて。とにかく事情を把握しないと。一貴さんの秘書の電話番号はわかる?」

「うん。わかる」

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