契約結婚のススメ
 東京本社の一貴さんの第一秘書の森下さんの電話番号は聞いている。なにかあったらかけるようにと言われているから。

 急いで電話をして事情を説明すると、状況を確認して折り返し電話をくれるという。森下さんもまだ知らないようだ。

 その間にも義母はタクシーを手配してくれた。

 もしかしたらロサンゼルスに駆けつけるようになるかもしれないから。

 パスポートはある。チケットさえ取れればいつでも行ける。英会話なら多分困らない程度にできるはずだから大丈夫。

 自分にそう言って聞かせた。

「場合によっては私もついて行ってあげるから心配しないで」

「ありがとう」

 義母に背中をさすられながら深呼吸を繰り返した。泣いたり騒いだりはしていられない、私は彼の妻だ。子どもじゃないんだからしっかりしないと。

 タクシーの到着よりも、会社からの電話のほうが早かった。

「はい。南城です」

『奥様、大丈夫です。心配はないと思います』

「そうですか」

 その言葉に少しだけ肩の力が抜ける。

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