契約結婚のススメ

 ロサンゼルスの出張から東京に帰ってきて、今日で一週間。

 早いものでもう五月だ。

「行ってきます。今日は実家に行くんだろう?」

「はい。もしかしたら泊るかも」

「ああ、帰りが遅くなると思うから、ゆっくりしておいで」

 チュッと軽いキスをして、素敵な微笑みを残して一貴さんは玄関の扉を閉めた。

 一貴さんは相変わらず優しい。ロサンゼルスでも、私が不安にならないように日本語が堪能な日系人の女性スタッフがいるホテルに滞在先を変更してくれた。

 英会話にはそこそこ自信はあったけれど、ロサンゼルスは今回初めて行くので勝手がわからない。女性スタッフのお陰で、おすすめカフェや危険な通りとか教えてもらってひとりで散策もできた。

 倒れた理由が過労だったせいで退社時間も早くなったから、夕食は必ず一緒に取ってくれたし、ドレスアップしてお客様と同席というディナーは緊張したけれど、それもこれもすべて楽しかった。

 お休みの日に観光もした。

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