契約結婚のススメ
 ああ、そうだった。電源をオフにしてそのまま寝てしまったんだ。

 ジッと私を見つめる一貴さんの目もとには、薄っすらと疲れが現れている。まさか。

「もしかして、寝てないの?」

「眠れるわけがないだろう? お前が心配で」

 そんな……。

「ごめんなさい」

「謝らなくていいから、ちゃんと話して」

 そうだよね。

 いつかは言わなくちゃいけない。先に延ばしにして、なにかが変わるわけじゃないし。

 息を吸って、ゴクリと喉を鳴らして。さあ、言わなきゃ。

 離婚しましょうって。

「私たち――」

 言葉が続かない。

「ん?」

 一貴さんは辛抱強く、私の言葉を待っている。

 りこん。たった三文字だ。

 離婚離婚って義母相手に騒いだくせに、いざ一貴さんの前に出ると〝り〟のひと言すら言い出せない。

 私って、なんて情けないんだろう。

「離婚はだめだぞ?」

 え?

「なんでも聞いてやるが、離婚はだめだ」

「でも」

 だって、私は。

「一貴さんは知らないから」

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