契約結婚のススメ
 フッと笑った一貴さんは、ギュッと私を抱きしめる。

「懲りずにまだ契約だとか思っているのか?」

「だって」

「あきらめろ。俺と結婚したお前が悪い」

 体を離した一貴さんは、そっと唇に触れるだけのようなキスをする。

「陽菜、責任とれよ。お前は俺の純情を盗んだんだ」

 思わず笑った。

 純情って、そんな。

「一貴さんて、クッ」

「ん?」

 クックック。あはは。

「怖いー」

「お前の方がよっぽど怖いわ」

 おもしろくても笑いが止まらなくて。最後に泣いた。


「これから、なにもかも白状するよ」

 ぐずぐずと泣く私を、一貴さんはすっぽりと抱きしめてそう言った。

「陽菜と初めて会ったインターハイのとき、なんてかわいい女の子だろうと思った」

 泣いてジンジン痺れる頭で、耳を澄ます。

「ローマでは、陽菜だとは気づかなかった。ただ、信じられないかもしれないが、俺は女には潔癖症なところがあって、よく知りもしない女と食事をするなんて考えられないんだ」

 え?

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