契約結婚のススメ
 門が開いてスーッと見慣れた車が入って来た。

「あれ?」

 降りてきたのは一貴さんだ。

「どうしたの?」

「仕事で通りかかったから」

 一緒に下りてきた村上さんが苦笑している。

 どうやらまた、回り道したらしい。

 満面の笑みの一貴さんは湊と漣をそれぞれ高い高いと持ち上げて、きゃっきゃと大喜びのふたりに満足し、最後に私を抱きしめる。

「早く帰るよ」

「うん。お仕事がんばって」

 名残惜しそうに私の唇にキスをする一貴さんは「気をつけてな」と言う。

 え、なにを?

「大丈夫よ。自宅の庭だもの」

 そう。ここは子育てのためにと一貴さんが買った、庭の広―い一軒家。

 どこも危なくはない。

 なにしろ大きな屋敷だからとても私ひとりでは管理できないけれど、門の脇、警備室には常駐の警備員がいて。家の中にはベビーシッター件ハウスキーパーさんがふたりと、至れり尽くせりだ。

「いってらっしゃーい」

 ちびっ子ふたりの手を取って、パパに手を振る。

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