契約結婚のススメ
 インターハイの時は私は十歳くらいだから記憶が定かじゃなくても、彼は高校生。私の顔を覚えていても不思議じゃない。

 ローマで会った時は気づかなかったよね。まさか、あの時から私が椿山陽菜だって知ってたの?

 頭の中がハテナで一杯だ。

 私はこっそり彼だけにわかるように『ローマ』と口を動かした。

 彼は微かに横に首を振る。

 ローマの話はしていないということか。なるほど。
 というか、本当にアキラさんなのね。

 それにしても、十数年前とローマと二回も会っていたなんてね。

 すごい偶然というか、もはや必然?
 いやいや、それは都合よすぎる解釈だ。

 ちらりと上目遣いに、彼を見る。

 料理に手を伸ばし黙々と食事をする様子からは、なにもうかがい知れない。

「陽菜ったら緊張しているのね。せっかく美味しいお食事なんだから、遠慮せずに召し上がりなさいな」

「あ、はい」

「どう?希子。たまには枇杷亭意外で食べる和食もいいでしょ」

「まあね」

 私の戸惑いをよそに、その後も義母と南城夫人は勝手にわいわいと盛り上がる。
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