契約結婚のススメ
「陽菜ちゃん、ほんと可愛いわぁ。お肌もピチピチ」
「ふふ、この子は夜遊びもしないし、品行方正だから」
あ、あはは……。
たまらず、曖昧に微笑んでうつむいた。恥ずかしい。
一貴さんは、母親同士のこの会話をどう思いながら聞いているんだろう。
ローマでも羽目を外したわけじゃないけれど。初対面の男性と食事して買い物まで付き合った。義母が自慢するほど品行方正ではないような気もして、なんだか気まずい。
居たたまれなさに気を紛らわせようと、料理に目を落とす。
赤いイクラが乗った向付。お決まりの揚げ物と、初夏らしく鰆の焼き物には新生姜が添えてある。
彩りも鮮やかで美しい料理の数々を残してしまっては料理人に失礼だ。味わえるほど気持ちの余裕がないのは残念だけれど、ちゃんと頂こう。
箸を取り、ちらりと目だけを動かして前を見ると、彼は瞼を伏せてガラスの器のウニに箸を伸ばしていた。
私と違って彼は緊張なんてしていないようだ。
ゆったりと座っている様子に、なんだか悔しくなる。
はぁ……。