契約結婚のススメ
 ピクリと眉を動かした森下は「お付き合いしてないんですか?」と疑わしそうに目を細めて俺を見る。

「俺をなんだと思ってるんだ? 関係者に手を出してどうする」

 セックスどころかキスもしてないぞ?
 具体的に説明したいが、口にすればセクハラになるから言わないが。

「ではなぜ、否定してこなかったのです?」

「いちいち相手をしていられるか。俺と噂になってる女は柳美加だけじゃない。お前だって、そのひとりだろ」

 森下も俺の愛人だという噂がある。社内公認のイタリア男の恋人がいるというのにな。

 美人という理由だけで、俺との関係を疑われる。噂の根拠などそんなもんだ。暇人の悪意でしかない。

 仕事に差し障りがあるならともかく相手にするだけ無駄。俺に言わせればゴシップ記事などどうでもいい。噂になった女とどうこうなるなんて絶対にないからな。

 むしろ怖いのはと考えて、陽菜の無邪気な笑顔が頭に浮かんだ。

 なんなんだあいつは。

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