契約結婚のススメ
 己の言葉に満足しうんうんとうなずきながら、営業部長を見ると、俺を振り返ったまま固まっている。

 隣を振り向けば、村上も目を大きく開けたままあぜんとしているし、バックミラー越しに仰天した様子の営業担当者と目が合った。

「なんだよ」

「い、いえ。そうですか。それはおめでとうございます」

「いやぁ、めでたいめでたい」

 ったく、森下と同じ反応か。

 噂はともかく実際は女っ気がなかっただけに、それを知る彼らが驚くのも無理ないかもしれない。
 だが失礼だろ?

「お見合いと伺ったので、てっきり政略結婚だとばかり」

 しれーっと村上が首を傾げた。

 お前、知ってて聞いてきたのか。

「筋を通すために見合いの形を取ったんだ。彼女とは子供の頃にも会ってるんだよ。ローマで偶然再会したのも含めて、もはや〝運命〟だな」

「う、運命?」

「ああ」

 そういえば陽菜のやつ、インターハイの時を覚えているのか?

 視線をさまよわせていたところを見ると忘れたのか。まぁ当時の年齢を考えれば仕方ないかもしれないが。

< 51 / 203 >

この作品をシェア

pagetop