契約結婚のススメ
 どの写真も楽しそうに笑っている。どの写真を見てもやはり彼女はヒヨコに違いない。母娘関係は良好なのか、希子さんと一緒に写る写真はとくに明るい笑顔を見せている。ギスギスした影など一切なく、時には頬を寄せ合いとても仲が良さそうな写真ばかり。

『実はね本当は就職先も決まっていたのよ。でも椿山が体を壊してしまって、看病したいからって就職を断ってしまったの』

 いっそ結婚してみたらどうかと、聞いたのだという。

『陽菜の花嫁姿を見ればお父さんも元気が出るかもって。そうしたらあの子、急に乗り気になってね』

 希子さんは少し寂しそうにそう言った。

『一貴、あなた立候補しなさいよ』

 なにを言い出すんだと、母の発言にギョッとしたが、次に希子さんが言った言葉に気持ちが動いた。

『そうだわ、一貴さん。陽菜の今後のお見合いの練習だと思って会ってみてくれないかしら』

『練習?』

『私も無理に結婚を進める気はないし、一度お見合いしてみれば、陽菜もこれからどうしたいか見えてくると思うし』

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