契約結婚のススメ
 どうやら希子さんは、心から娘を心配しているようだった。

 ヒヨコがどんな顔をして見合いの席につくのか見たかったし、あの人形のようにかわいらし少女がとわかった上でもう一度会ってみたいと思った。

 深く考えて見合いに臨んだわけじゃない。

 まさか、陽菜があんなふうに言い出すとは夢にも思っていなかった。

『お願いです。私と結婚してください! 好きになってくれなくてもいいんです。浮気だってしてかまいません。形だけの妻で』

 訴える彼女の真剣な瞳が脳裏をよぎる


 色々と思い出しながら、左手の薬指に目を落とすと、赤い糸ならぬ真新しい結婚指輪が、シャンデリアの灯りをキラリと反射した。

 我ながら意外だな。

 結婚指輪なんてものは飼い犬の鎖のようだと嫌悪感を抱いていたが、こうして自分の指輪を見ても全く嫌な感じはしない。

 この先、指輪が傷だらけになって輝きを失う頃、俺と陽菜はどうなっているんだろう。

 陽菜の存在が体の一部のようになっているのだろうか。それとも――。

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