御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
菫の身体を持ち上げるように強く抱きしめ、彼女の首元に唇を這わせる。

すでに身体を重ね恋人として過ごしているとはいえ、菫はまだまだ未熟だ。

黎に感情をぶつけられてもどう応えていいのか悩んでしまう。

黎が着ているニットを掴むだけで精一杯だ。

「悪い……」
 
しばらくの間菫を抱きしめていた黎は、菫の頬に一度キスを落としゆっくりと身体を離した。

「どうしたの? やっぱり仕事でなにかあったの?」

菫はゆっくりと顔を上げる。

ここまで取り乱す黎を見るのは初めてだ。

やはり仕事でトラブルがあったのだろうか。

黎は「そうじゃない」と首を振り、気まずげに天を仰いで大きく息を吐き出した。

「仕事なら努力とやり方次第でなんとでもできる。できなかったら別の角度から斬りこんで次に進むだけだ。だけど、菫にだけはそれができなかった」

「え、私?」

「ああ。ようやく手に入れて愛し合ったのに、日曜日の晩、菫を家に送り届けた途端この有様だ」

平静を装いながらも力ない声。

切れ長の目に、不安定な光が宿る。

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