御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「テールスープもおいしかったんですよねー」

会社を出て駅に向かって歩きながら、菫は笹原の声に相づちを打つ。

通りは家路を急ぐ人が多く、菫は無意識にお腹をかばい、ぶつからないように気をつける。

「菫っ」

そのとき背後から菫の名前を呼ぶ声が聞こえた。

しばらく耳にしなかった怒りを含んだ声を耳にし、菫はぱたりと足を止め、一瞬で身体をこわばらせた。

「え……どうして」
 
辺りをうかがうように振り向くと、道路の端に停まっていたタクシーの後部座席から見覚えのある女性が降りてきた。

「菫、こっちに来なさい」

「母さん……」
 
突然菫の前に現れたのは、長く顔を見ていない母だった。

パンツスーツにローヒールのパンプスを履き、仁王立ちで菫を睨んでいる。

十メートルほどの距離があっても、その表情の厳しさがはっきりと見える。

上京以来一度も菫の様子を見に来たことがない母が突然現れ、菫は立ちすくむ。

「前に菖蒲から連絡があったでしょう? お見合いが控えてるのにいくら待っても帰ってこないから、迎えに来てあげたのよ。このまま家につれて帰ります」 

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