御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
黎は泣き笑いの表情を浮かべ、涙混じりの声でつぶやいた。

「うん。私も幸せ」

菫は黎の胸に身体を預け、再びこぼれ落ちる涙を少し乱暴に手の甲で拭う。

「俺、菫とこうして一緒にいられるのは生涯最後の奇跡だと思っていて……これからは奇跡に頼らず他に欲しい物があれば俺が努力して手に入れればいいと思ってたけど」

黎は両手を広げ、菫の身体を抱きしめる。

「赤ちゃんを授かるのも、奇跡だよな。今度こそ俺、一生分の奇跡を手に入れた気分だ」

菫を抱きしめる手は震え、声も涙が混じったようにくぐもっている。

ここまで菫の妊娠を喜び感極まっている黎の姿に、菫の胸が熱くなる。

菫にしてみれば、ここまで感情を揺らし涙を流して喜んでいる黎の姿を見られたことが、奇跡だ。

それこそ生涯最後の奇跡かもしれない。

そうはいっても母は強し。

そして欲張りだ。

「一生分なんて言わないで。だって私、この子をひとりっ子にするつもりはないから」

その言葉を聞いて、黎は菫を抱く手に力をこめた。





「だけどどうしよう。母さんがこのまま引き下がるとは思えない」

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