御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「またなにかあればご連絡ください。あ、だったら」
 
極は自分の名刺を新たに取り出すと、裏に自分のスマホの電話番号を記した。

「これ、俺個人のスマホの番号。困ったときにはいつでもどうぞ。あ、分割払いOKの良心価格だから気兼ねはいらないよ」

「それは助かります。でも、この名刺が必要にならないように頑張ってみます」

「そうだね。それがベストだけど、法律の力に頼るのもありだから、頑張りすぎないようにね。じゃあ俺は今から裁判だから、これで」

極はそう言ってソファの上に置いていたコートとブリーフケースを手に取り、部屋を出て行った。

背筋が伸びた後ろ姿も黎と似ていて、菫は再び黎に会いたくてたまらなくなった。

それに、極を差し向けてくれた礼を早く伝えたい。

「あれ」

あれほどビジネスライクに丁寧に接していた極が、部屋を出るときにはかなり親しげに菫と話していた。

それに、最初は作り笑顔のようなできあがった表情だったのに、去り際には冗談交じりに言葉を重ね、目元を細めて笑っていた。

その変化のきっかけはなんだったのだろう。

その後いくら考えても、菫はその理由を見つけられなかった。

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