御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「そう。部長がたとえ付録でも子どもにはいい物に触れてほしいし製紙会社が出すものだから妥協は許されないって押し切ったの。作り方の説明本なら電子でもOKなのにわざわざ紙媒体で世に出す意義を考えるべきだって熱弁をふるってね。かっこよかったよ」
 
女性として初の取締役候補と言われるほどのやり手で弁が立つ部長の言葉に、費用対効果を優先する役員たちは黙りこんでいた。

「だからなおさらたくさんの人に買ってもらいたいんだけどな」

本を眺めながら、菫はぽつりつぶやいた。

売り上げが悪ければ広報宣伝部全体の評価が下がり、今後ホームページでの展開にも影響が出るはずだ。

「とりあえず、十冊程度買ってくれそうな方がいらっしゃってますよ」

「え、十冊?」

背後から聞こえた声に振り返ると、なぜか経理部の女性が立っていた。

「突然ごめんなさいね。実は紅尾システムの担当者さんと打ち合わせが終わったんだけど、御園さんに会いたいらしいの」

「私と、ですか?」

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