御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
よどみなく答える菫の言葉に、悟は明らかにがっかりしている。

菫との結婚を熱望しているわけではないだろうが、だとすると、地方という言葉に反応したのかもしれない。

「地方の企業にも魅力はあるよ。畑中建設が最近建設した大型ショッピングモールだって雑誌に載ってたしテレビの特集でも見たよ。さすが畑中建設。地元民として誇りに思ってる」

「だったら話は早い。会社を継ぐ前に早く結婚しろってうるさいんだ。田舎ってそういう感じだろう? 結婚してようやく一人前みたいな。見合いの話も多いし、だったら知らない相手より昔仲よくしてた菫と結婚するのがいいんじゃないかって考えたんだ」

「そんな簡単に……」
 
あっけらかんと話す悟に菫は困り果てる。

相変わらずつかみ所がなく飄々としていて、菫を見る目もまるで昔と同じだ。

決して恋愛対象ではなく、単なる部活の後輩で妹のような存在。

悟の目を見れば、今もその気持ちは変わっていないとわかる。

口では菫との結婚を考えていると言っていても、他に理由があって訪ねてきたような気がした。

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