御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
今の記事からも、黎は喜んで海外に行くはずだ。

今後の黎の立場を考えても行ったほうが絶対にプラスになる。

たとえ菫がひとり日本に残されるとしても、黎の将来のためには行かないという選択肢はないはずだ。

菫はリビングのソファに横になり、気持ちを落ち着けるようにお腹に手を当てる。

「どうしたらいいかな」

まだ膨らみもないお腹に声をかけた。

もちろん反応はないが、自分ひとりで大切な判断をするのが怖いのだ。

もしも菫が日本に残ると言えば、黎のことだ、海外赴任をあきらめると言い出しかねない。

それはなんとしても避けたい。

だからといって英語も話せず黎の役に立てない自分が同行しても、足をひっぱるだけだ。

それに手がかかる赤ちゃんが加わるとなればさらに黎の負担が増えてしまう。

やはり菫は日本に残り黎にはイギリスで存分に力を発揮してもらいたい。

「だけど、やっぱりさびしい」

行くべきだと思う一方で、離れたくない気持ちも強い。

どうするべきなのかわからずソファの上でごろごろしていると、玄関のドアが開く音が聞こえた。

「え、なに」

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