御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
慌てて飛び起きた菫がリビングを出て玄関に顔を出すと、明日帰ってくるはずの黎が立っていた。

「ただいま」

「ど、どうして」

片手をあげにっこり笑っている黎に、菫は駆け寄る。

「早く帰りたくて徹夜で完璧な説明資料を作って先方を納得させた。結果受注できて一日早く帰れたんだ。俺は評判通りのやり手の御曹司なんだよ。どうだ、惚れ直した?」

黎は菫の頭をくしゃりと撫で、かすめるだけのキスを落とす。

久しぶりに黎の熱に触れ、一瞬で菫の心が温かくなる。

「昨夜はさびしかったか? さびしかったよな」

黎はそれを期待しているかのように問いかける。

徹夜で疲れているのだろう、近くで見ると黎の目の下にはクマができている。

けれど仕事を最優先に考える黎らしく、顔には仕事をやり遂げた満足感も浮かんでいる。

「私、さびしいっていうよりもつらかった」

菫も黎の頬に手のひらで触れ顔を近づけた。

「そうか……つらかったか」
 
一瞬目を大きく開いた黎は声を絞り出しそうつぶやくと、菫を素早く抱き寄せ貪るような口づけを何度も繰り返した。

そして黎に負けないくらい積極的に、菫もキスを返し続けた。
 
< 243 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop