御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
仲がいいとはいえ菫と黎は単なる友達だ。この流れはおかしいだろう。

菫は黎の手をそっと掴み、ぎこちない笑みを浮かべる。

「か、からかわないで。私、こんなことすら初めてなの」

今の黎はあまりにも親密すぎる。

二十代も半ばを過ぎているというのにこの程度のふれ合いにも免疫がない自分が情けない。

これでは冗談でなく本当に中学生以下だ。

菫はくらくらする頭の中を整理し、どうにか気持ちを落ち着ける。

「それでね、お見合いの話に戻るけど。勝手に破談にしちゃったから母親が激怒して、それ以来実家に帰りづらくて・・・・・・勘当されたも同然なの」

深刻にならないよう気をつけ話しても、明らかに張りつめた声がリビングに響く。

「あ……ごめんなさい。こんな話、聞きたくないよね」

菫は高ぶる気持ちを鎮めるように一度深く息を吐き出した。

菫が実家の家族とうまくいっていないことなど黎には関係がなく、これ以上愚痴をこぼされるのは迷惑なはずだ。

家族のことはこれ以上なにも言わないでおこうと決めた。

「破談、ね」
 
そのとき、黎は指先でもてあそんでいた菫の毛束をぱらりと落とし、固い声でつぶやいた。
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