御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
それに、黎に家族の話はこれ以上しないでおこうと決めたばかりだ。

菫は身体を動かし黎から離れようと再び試みる。その途端、黎の手にぐっと力が入りさらに強く抱き寄せられた。

「いいから話せ。見合いの話がまた持ちこまれて困ってるんだろう」

黎は片手を菫の腰に回し、もう一方の手で菫の頭を柔らかく撫で始める。

その動きはとても慎重で優しく、菫の心情を案じる黎の思いが伝わってくる。

菫は次第に脱力し、自ら黎の胸にことんと身体を預けた。

黎には愚痴をこぼさないと決めたのに、全身を包みこむ黎の温かさにほだされていく。

「あ、あのね」

菫は自分の意志の弱さに落ちこみながら口を開いた。

「前にお見合いを断ってから母は私に会ってくれなくて。それなのに今さらまたお見合いなんてわけがわからない。第一、好きでもない相手と結婚したくない。だけどまた断ったら今度こそ本当に実家に帰れなくなるかもって考えたら、怖くなっちゃって」

この一年半、母親と顔を合わせず電話をしてもそっけない言葉ですぐに切られている。

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