御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
菫は全身が頼りがいのあるなにかに守られているような感覚に包まれた。

「菫」

遠くから名前を呼ばれ、菫はぼんやりと目を開く。

「黎君? 私、え、どうして」
 
菫の視界に入ってきたのは、菫が寝ているベッドの脇に膝立ちし心配そうに顔を歪めている黎だった。

菫の様子を食い入るように見つめている。

「大丈夫か? かなりうなされてたけど、悪い夢でもみたのか?」

黎は菫の頬にかかった髪を後ろに梳いた。その手の温かさには覚えがあった。どこまでも暗く悲しい世界の中でもがいていた菫を呼び戻してくれた力強い感触だ。

「黎君」

菫のかすれた声が部屋に響く。

「あ、私……」
 
次第にはっきりとしていく意識の中、菫は辺りを見回した。

そこは黎の寝室で、サイドテーブルやライティングデスクなどの見慣れない調度品が目に入る。

黎の家に泊まると決めた菫を、黎は無理矢理寝室のベッドに寝かしつけたのだ。

『俺はリビングで仕事をするし、そんなときにソファで寝るのもしょっちゅうだから気にするな』

そう言って黎はソファで十分だと言う菫の言葉など完全に無視した。

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