御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
黎の穏やかな声に、菫の体からわずかに力が抜けていく。

「ベッドはとても寝心地がいいから心配しないで。さすが御曹司愛用のベッドだよね、横になった途端すぐに眠っちゃったみたい」

菫は壁を見ながら明るくそうつぶやくも、涙混じりでくぐもった声に説得力はなく、黎の口からはため息がこぼれる。

「こっちを向け、菫」
 
黎がベッドの端に腰かけた拍子に菫の身体が沈み、小さくバウンドする。

同時に伸びてきた黎の手が菫の頭をくしゃりと撫でる。

「よくうなされるのか?」

黎の問いに、菫はぶんぶんと首を横に振る。

本当のことを言えば、黎が心配するはずだ。

ただでさえこうしてベッドを占領し困らせているのにこれ以上迷惑はかけられない。

「私、普段ひとりだからたまにさびしくなって泣いちゃうみたいで。今日は妹からの電話でホームシックになっちゃったのかな。この年になって夢で泣くなんて、子どもみたいだね、恥ずかし――」

「無理しなくていい。ホームシックになるほど実家に帰りたいのか?」

菫の言葉を信じていないと明らかにわかる声で、黎は菫の言葉を遮った。

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