月の砂漠でプロポーズ
 人の眼がなくなった途端、耳を塞ぎたくなる阿鼻叫喚が始まった。
 異口同音の叫び声を総合すると、彼女達は結婚詐欺に遭った。

 そして
『主犯格の腹違いの妹が高飛びするらしいから追いかける』という怪情報が詐欺師から送られてきた。
 彼女達は独自に空港を張っていた。
 が、待てど暮らせど犯人及び『タカハタナリミ』は姿を現さない。

 焦れた一人がアナウンスをさせた結果、全員騙されたことが発覚。

 犯人が乱発したという借用書を目の前に突きつけられた。
 借主には知らない名前が、連帯保証人として私の名前が記載されていた。

 え、ちょっと待って。
 これはなに。
 しかも、借主の名前も覚えがある気がしてきた。
 んん?
 さらに。

「あんたのハンコだって押してあるのよっ」

 覚えのない印鑑がおされており。

 おまけに、女性達に犯人が名乗った名前は何通りもあったけど、全員がうちの会社の顧客だった。
 というか、私がお掃除しに行ってるお宅だった。
 道理で見覚えがあったはずである。

「ちゃんと聞きなさいよ、言い逃れさせないんだから!」

 とどめは、女性達から恋人と仲睦まじく移っている写真をそれぞれ見せられた。
 おまけに詐欺師が『妹』として彼女達に渡した写真には、なぜか私が写っている。
 彼女達の恋人兼詐欺師は私の雇い主だったので、最悪なことに私は共犯とみなされてしまった。
< 10 / 127 >

この作品をシェア

pagetop