たすけて!田中くん
————私、これから何されるんだろう。
脅されたりするのかな。とぼんやりと考える。
逃げることばかり考えていたけれど、もしもこの向かう先に敦士がいるのなら好都合だ。ようやく話す機会ができる。
連れてこられたのは今はあまり使われていない旧校舎で、古い木造の建物なため歩くたびに軋む音がする。
「入れ」
ひとりの男に背中を押されて促される。
二階の一番端っこの部屋が彼らのたまり場らしい。旧校舎へは初めて足を踏み入れたので、少し新鮮だ。
ここは一言でいえば異質な空間。
三人がけの黒いのソファが向かい合い、その間にはガラス製のテーブルが置いてある。
まるで人が暮らしているような部屋みたいだ。
「おー、来てくれたんだね! よかったね、敦士」
爽やかそうな笑顔を貼付けながら言うのは、私に敦士ってヤツの彼女になれって言ってきたオレンジの髪の男だった。
「結高《ゆたか》さん、拘束しておきますか?」
物騒な言葉が聞こえてきたけれど、それよりもひとつ収穫があった。
オレンジの髪の男は、結高というらしい。
敦士が手のつけようのない不良というだけでなく、彼の友人である結高とかいう男が社長令息だとかで多少の問題が起こっても揉み消しているとか、クラスの子が言っていた。それがこの男みたいだ。
それにしても目つきの悪い男子たち全員が私を舐め回すように見ていて、正直気分が悪い。